修理実例(小手の二・その2)
こんばんは。田原剣道具店WEB担当田原です。
風もだいぶ冷たくなり、すっかり秋らしくなってきました。前橋はまだそれなりに暖かい日も多いのですが、沼田はこれから一気に寒くなるんですよね。
まあ、まだ秋真っ盛りで果樹園や行楽地等はそこそこ賑わっているようです。私は行く暇がありませんが。
気を取り直して、「修理実例・小手の二・その2」を始めます。前回は左小手のほつれをまつり直しました。今回は右小手の修理を行います。
右小手手の内のアップです。手の平の先に大きな穴が抜けています。
ので、これをクラリーノ革を当てて「穴当縫い」をします。
左小手の縁のまつり直し同様、革が比較的良い状態だったので、そこそこの大きさで収まりました。
これで両手の修理が済みましたので、「藍染直し」を小手全体に施します。
「全体に」と言ったのには訳がありまして、修理状態とお客様のご希望によっては部分染めのみの作業もする事があるからです。まあ、今回は「全体に満遍なく・一度のみ」染直しを行いました(当然クローム革の小手頭にもです)。
「藍染直し」が終わって完成した小手の表側です。修理前と比べるときっちり綺麗になっています。
今回の小手修理の内訳ですが、「右小手・手の内の穴当(¥700)」「左小手・縁革まつり直し(¥サービス)」「藍染直し・軽(¥1,500)」で、合計¥2,200になります。
「藍染直し・軽」と通常の染直しの違いはそのまま作業手順の差だと思っていただいて結構です。つまり、通常ですと藍染の手順は『染直し>乾燥>再度染直し>乾燥後,、状態を見て染まりが浅かったら再度染直す』と間に乾燥をはさんだ上で最低でも2回は藍染を行います。
軽の場合は仕上がりの状態によらず1回の藍染で終わりです。半乾きぐらいの時にあまり極端な染めムラが有れば調整はしますが、乾燥自体は1回で終わりで乾燥させた後に染め直し作業は致しません。
今回のクローム頭の小手は比較的状態が良く、深い傷も無い為綺麗に直りました。が、実はクロームの小手は修理が難しい小手でもあります。
と言うのも、クローム革と呼ばれるこの手の光沢合成革には割と色々な種類があり、そのタイプによっては直そうにも針を通せない(裏地がザク織の生地だったり、経年劣化で硬化して、通す端から裂けるものもある)ものがあったり、経年劣化によって革の状態がひどく極端な事が多い為だったりします。
後は単純に値段が安い(普通に1万切りますから)ので、徹底して修理して使う程の製品ではない、と言うのもあります(一回ちゃんとした上質の材料で、「一見するとクローム小手」その実上級品、と言う小手を作ってみたい気もします。ただ表に光沢のあるタイプの革はどうしても経年劣化も含めて痛んだ時に手直しし難いのが難点です)。
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