修理実例(面の一・その3)
こんにちは。田原剣道具店WEB担当田原です。
「面・仕立て直し」作業第3回目、予定通り面の「分解」作業の後半を紹介したいと思います。
まず、面布団に縫い付けたままの縁皮を外していきます。
このように、出来る限り面布団を傷つけないように止め革を切り取りながら、面布団の側に残した縁皮を外していきます。
縁皮をすべて取り外した状態の面布団です。使い込まれた防具には仕立てた時の形状もさる事ながら、使用した人の型が残ります。
その為、分解しても面布団は素の状態には戻りません。
次は布団以外の部品を分解していきます。具体的な手順としては、内輪>天地>面金側に残った縁皮の順に外していき、最後に面金と顎を取り外す事になります。
面金・内輪・天地・顎をすべて取り外した状態です。今回は汗の入りも少ない為、これらの部品はそのまま使います。ただし、面金に巻かれている土台や、顎裏の付け根などは補強・交換します。
と言うのは、顎裏や面金の土台は、汗などでどうしても一番負荷がかかる為です。今回は顎裏を革を当てて補強、土台は一から巻き直す事になります(通常の仕立て換でも、土台は再利用を考えません)。
土台の表生地を外し終わった後の面金です。白く見えるのはナイロンロープを伸ばしたもので、芯になっているのは麻紐です。
面金は面の全部品の取り付けの基盤になります。その為、輪の部分に藁など(当店では麻紐)を取り付けて土台を作ってあります。この土台も取り外します。
全部外し終わった後の面金です。チタン製と言うのもあってか、殆ど痛みなどはありません(少し錆がういている所はありますが)。
仕立て直し(に限らず分解含む修理)の際、どうしても「開けて見たら使えなかった」という状態が判明する事がございます。面ですと汗がたまりやすい内側の部品(特に古い鉄面金ですと汗で錆る為輪の部分が腐食しきる事がありますし、初期の軽合金製の面金ですと輪の部分が折れている事もあります)などにこうした事が多いです。
修理のご依頼の際、そういう事もあると言う事を念頭においていただければ幸いです。
こんばんは、たまたまこのページを見つけ、興味深く拝見した次第です。
剣道具の修理、私、自分自身でも
やりますが、ほんとに奥が深いですよね
でも、やればやるほど、面白く、結構休みの日は剣道具とにらめっこしてることも多いです。
修理そのものとは関係ないのですが、
ぜひご専門の方に伺ってみたく
ちょっと書かせていただきます。
今、地元での稽古用に、安価で使いやすい剣道具の購入を検討しており、
5万円程度で、クラリーノ張り
8万円程度で、鹿がわ張り
のいずれにしようか考えてます。
クラリーノはかっては、数年でぼろぼろに
劣化しましたが、今はすこしよくなっているようにも聞きます。この点実情はどうなんでしょう?
すぐにぼろになるようなら3万円高くても
鹿がわ張りかな?とも思うのですが…
ただ、4年ほどあとに、6段審査を見据えて20マン程度のいいものを買うつもりなので、当座の間に合わせといえば間に合わせなので、悩んでます。
ご教示いただければ幸いです。
投稿: 剣道好き | 2007年11月10日 (土) 22:35
こんばんは、剣道好き様。当店のブログに足を向けていただきありがとうございます。
>今、地元での稽古用に、安価で使いやすい剣道具の購入を検討~
うーん。実はすごく難しく、同時に身も蓋もないほど簡単な問題だったりします。
剣道好き様はご自身でも修理をされているようですからある程度はわかると思いますが、剣道の防具は、「打突競技における防護用」としてはかなり優秀な部類になります。が、同時に素材的にも構造的には割と融通がきかない方だと言ってもいいでしょう。
で、この「融通がきかない」と言うのが曲者で、安い防具と言うのは値段を下げる為にかなりの部分の質を落とす事になります(人力・素材・製造工程etc・・・)。
結果として、(値段の設定を誤魔化していないのが前提ではありますが)剣道具の性能は「値段なりの性能」と言う事になります。
まあ、商売としてやっている以上、流通他の都合(生産者の努力も入ります)で「良品が比較的安価で手に入る」と言う事も無い訳では無いですが。
>5万円程度で、クラリーノ張り
>8万円程度で、鹿がわ張り
参考までに当店のお勧め製品で比較致しますと、
「クラリーノ張6mmミシン刺セット(ミツボシ製)」で希望小売価格が\88,200(税込、実売5万後半)。
一般の方で練習用や初心者の方に良く勧めるのは5~4mmのクラリーノミシン刺(定価10万前後、実売7~8万)か二分の手刺(実売10万~)あたりになります。
正直、その辺の価格帯ですと紺革はお勧め出来ません(革そのものの質が心配)。練習用で割り切って使うにしても、クラリーノ製でそこそこの製品にした方が持ちも良いと思います。
当店は社長のこだわりから始まっている為、剣道具の選択に「品質重視」に比重を置きがちですので、金額的には多分満足いかないのではないかと思います(苦笑)。
ただ、「良い物」の製作にはさまざまな面でコストが必要だ、と言う事をお心の片隅にでも留めおいていただければ幸いです。
投稿: WEB担当田原 | 2007年11月13日 (火) 00:07
直接関係ない質問にご丁寧にお答えくださり、ありがとうございます。
確かに、値段なりということはあるのでしょうね…
アドバイスを参考によく考えます。
ホームページの方拝見しました。
とても良心的なお店と思いました。そちらに出向いた折には寄らせていただこうかと思います。どうぞよろしくお願いします。
投稿: 剣道好き | 2007年11月13日 (火) 00:53
はじめまして、この写真のような修理はどれくらいの金額でできるのでしょうか?
中2の息子の面が、汗のせいでぼろぼろです。
新しく購入した方が良いのでしょうか?
悩んでいます。
投稿: 息子を応援する母 | 2011年7月 4日 (月) 22:03
こんにちは、息子を応援する母様。当店のブログに足を向けていただきありがとうございます。
>はじめまして、この写真のような修理はどれくらいの金額でできるのでしょうか?
ここで写真で提示している修理は「仕立て替え」と言って、一部部品を除き一から作るのと変わらない作業ですので、『部品交換他一切修理箇所無し』でも¥30,000からとなります。
修理箇所と内容によりますが、汗による破損が目立つなら、修理前にクリーニングで汗を抜く必要も生じる場合がありますので、時間と金額はそれなりにかかります。
中・高校生向けの面でしたら単品でも2万前後からそこそこの物が用意出来ますので、買い替えも念頭においた方が良いと思います。
修理箇所の確認・金額のお見積もりにつきましては、メールで防具の写真をお送りいただければ無料でチェックさせていただきます。
宜しければご利用ください。
投稿: | 2011年7月 5日 (火) 14:09