修理実例(面の一・その5)
いやすっかりご無沙汰をしてしまいました(汗)。元日の更新時の告知通り、今現在は前橋店店長として沼田の自宅から前橋に通い詰な訳ですが、「どんなに急いでも約1時間」の道のりはやっぱり遠いです。メリットも無い訳ではないのですが。
割と残った実務が多い(しかも掘り返すと洒落にならないような事が出てきたりする)為、例の如く多忙な日々を送っておりますが、継続するつもりはありますのでこれからも宜しく御願い致します。
それと、このブログを見て何人かの方から「面修理が終わらないぐらい忙しいのですか?」と言うご質問兼暖かいお言葉をいただきましたが、基本的にこのブログで扱っている修理は終わった後に写真を整理して載せておりますのでご安心下さい(何を?)。改めてこの場を使いましてお心遣いへの御礼を申し上げさせていただきます。ありがとうございます。
さて、さっそくですが面修理実例を再開させていただきます。今回は前回の「面金の仕込み」に続いて「顎の仕込み」を行います。
まず、分解した際に外した顎は縫い止めた跡や汗による腐食などもありますので、しっかり補強します。大体顔にかいた汗は地を伝わって顎の内や裏側まで染み込みますので、どうしても乾燥がし辛い為、分解すると顎裏側の上部が無くなってる事もあります。
今回はそこまでひどくも無く、上側に少々厚めに鹿革を当てる事で済みました。
次に面金に取り付ける為の生皮を用意します。生皮は乾燥したものを水で戻して加工します。
水で戻す前の顎付け用の生皮です。これを戻して柔らかくしてから型で切りぬいて形にします。
抜いた生皮に穴を開けて、顎に飾り糸で固定していきます。糊の類は使いません。
前回(面の一・その4)で仕込済みの面金に、生皮を付けた顎を取り付けます。縒り糸でしっかりと縫い止めます。
縫い止めた後、ゆっくりと乾燥させながら形を出していきます。エッジの立った顎皮の形はこの段階で作ってしまいます。
生皮が乾燥して取付が完了した状態です。この状態でも顎はまったくぐらつかないように完全に固定してあります。
と言いますか、これがこの後の面の組み立ての基礎になるので、かなりしっかりと組む事に気を配ります。
修理の請負の中には「顎の差し替え」と言って、完成済みの面の顎が折れたり(または気分で模様替えしたいとか)して分解しないで顎のみ差し替える作業も出来ます。
が、どうしても無理があると言いますか手順的にそぐわない作業ですので、一から組み立てるのよりはどうしても今一つな点がある事をご注意くださいませ。