剣道具修理 Feed

2007年9月27日 (木)

修理実例はじめます(その5)

修理実例はじめます(その5)です。 2007092701_3

2007092702_5  

 

 

前回の最後の写真から、縁革をまつり縫って完成した状態です。この小手はクリーニング済ですので、これから紐を外して、「藍染直し」に入ります。

20070927indigo  

 

 

これが藍の原液です。液の表面の光沢は油膜で、これが出る内は藍液は「生きて」います。死ぬと青っぽい粒の混ざった汚水になってしまい、染料としては全く使えません。

この藍液を、筆で小手の表全体に塗りつける・・・と言うより染み込ませていきます。「染直し」と言うのはそういう意味で、そう言うのが一番しっくりくるからだったりします。クリーニング後ですと、使用中に染み付いた汗や汚れも抜け落ちていますので、通常よりも藍は良くなじみます。

一度全体を染め直した後、乾かせてからもう一回染め直します。一度ですとムラが出る事が多いのと、藍色にも深みが出て持つようになるので、クリーニング後の藍染は二度染が基本です。防具の状態によっては三度・四度と繰り返す事もあります(古い防具ですと完全に生地の藍が抜け落ちて真っ白になってる事がありますので)。

染め直しが済んだら小手紐を付け直して完成です。

20070927comp01 完成品・表です。

 

 

20070927comp02 完成品・裏です。小手紐は「人絹(人工絹糸)・古代紫」のものに交換してあります。

 

 

今回のこの修理ですが、修理内容は「手刺小手クリーニング(送料込総額¥5,500)」「小手手の内総革張替×2(¥7,000×2)」「小手紐交換×2(¥1,500)」「藍染直し(¥2,000)」「小手表・紺革当て直し×2(¥1,000)」となり、合計で¥24,000になります。

安くは無いと思いますが、小手自体が「二分織刺・返し小手「国勝」」と言う軽く使いやすい良小手ですので、「使用者の手になじんでいる」「小手本体の状態は十分良好」と言う事を考えると、高いと言うのも微妙ではあります。

ひとまずこの小手の修理実例は今回で終わりです。次回は・・・どうしましょうか(苦笑)。

2007年9月23日 (日)

修理実例はじめます(その4)

「修理実例はじめます」の4回目です。前回までで手の内革と縁革を外す所まで進めました。

外した後に頭の縁をまつり縫って中の身(綿や鹿毛)がこぼれないようにして、小手頭や手首などに破損した部分があったらそこを直します。今回は小手頭の小指側の力革(補強用の革。今回は藍染革でしたが、小手によっては印伝革などを使っているものもあります)が痛んでいたので当て直しておきます。

2007092301

 

準備が出来たら、新しい手の内革を仮止めして調整してから縫い止めます。

 

2007092302

 

仮止めした手の内革です。今回はお客様のご要望で、本来のサイズよりやや大き目に手の内革を切り出しています。

 

 

2007092303

 

手の内革を縫って張った状態です。この後、縁革(今回は藍染革)を縫い止めます。

 

2007092304

 

縁革を縫い付け終わりました。

 

この後、縁革を返して手の内革にまつり縫いで止めていき完成・・・で、これが完成写真・・・と言いたい所ですが、「藍染直し」がありますのでもう1回続けさせていただきます。

2007年9月21日 (金)

修理実例はじめます(その3)

中が開いてしまいましたが、「修理実例はじめます」は継続します<当たり前だ。

まずは左小手・手の内の状態から。

2007092001 見ての通り、普通にボロボロです。

こちらの痛み具合ですと、大体普通に張替をお勧めします(革自体はしっかりしているので、当てで済ます事は出来なくもないですが・・・いかんせん痛んでいる個所が多いので)。

次は右小手の手の内です。

2007092002 2007092003

一見なんとも無い(とは言え親指の所に穴は開いてますが)ように見えますが、右の写真の指の又部分の所に痛みがあります。

2007092004

写真の赤い丸で囲ってある所がそれです。

表から見ると全く切れてないように見えてましたが、実は手の内の革を小手頭に縫い付けてある部分が完全に切れて無くなっています。

こうなると保持力自体落ちるのと、使用中に小手に掛かる負荷の掛かり方がおかしくなる為、小手頭の内側の生地や表の部分が裂けたりします。

一時的に外して当て直す、と言った修理も出来ますが、今回は両方とも張替希望ですので普通に外してしまいます。

2007092005

分解後の小手です。これから下準備をして張り替えていきます。

2007年9月16日 (日)

修理実例はじめます(その2)

えー、はじめたばかりの「剣道具修理実例はじめます」ですが。

・・・

・・・・・・

・・・・・・いきなりですが、実例の修理が無くなってしまいました(爆)。いや、別に壊れたとかそういうネガティブなので無しに。

単に今日の午前中の段階で修理は終わっていて、終わった修理の写真をとる前にお客さんがナイスタイミングで受け取りに来てしまったというだけなのです。

ので、次回の実例を急遽繰り上げる事にします。2007091602kote01 2007091602kote02

クリーニングからあがって来た織刺手刺小手です。1枚目の写真でもわかりますが、右手の内が大分痛んでいる為、使用しているのが高校生(それもかなり熱心にやっている)なので、「両手の内張替」と「藍入」指定になっています。

次回は「分解作業」と「張替前の下作業」になると思います。

・・・ちゃんと上げられるといいなあ(ちょっと弱気)。

修理実例はじめます

いきなり間が開いてしまいましたが、改めて当初の予定通り「剣道具の修理実例」を載せて行きたいと思います。

記念すべき第1回目の実例はこちら。20070916kote01 20070916kote02

社長が教えている「沼田剣桜会道場」からの修理です。

練習量が多いので、物は悪くないのですが大分痛んでます(苦笑)

とは言え、合成革(クラリーノと言います)の安い小手と言うのはここ最近で出回ってきたものですし、痛み方にもよりますがどんな小手でも1回ぐらいは手の内の張替修理(総合成革¥5,000~総紺革¥7,000)をしても無駄になる事は無いと個人的には思ってます。

破損個所ですが、左小手が20070916kotel01 20070916kotel02 20070916kotel03 20070916kotel04

手の内親指部分に小穴×1、親指表の刺子生地部分に擦れ穴×2、

ケラ(表側の手首と手の平の間の膨らんでる段差部分)の中央にパンク×1、

表側の手の平の小指側のパンク×1(パンクと言うより擦れと負荷で外れた感じ)。

右側が、20070916koter01 20070916koter02

手の内親指部分に小穴×1、表のケラ親指側にパンク×1。

・・・列挙してみると思ったより個所が多いですね(汗)。

次だけで終わりに出来るかどうかちょっと不安になりました(ブログの投稿として、ですよ?)