修理実例はじめます(その5)
前回の最後の写真から、縁革をまつり縫って完成した状態です。この小手はクリーニング済ですので、これから紐を外して、「藍染直し」に入ります。
これが藍の原液です。液の表面の光沢は油膜で、これが出る内は藍液は「生きて」います。死ぬと青っぽい粒の混ざった汚水になってしまい、染料としては全く使えません。
この藍液を、筆で小手の表全体に塗りつける・・・と言うより染み込ませていきます。「染直し」と言うのはそういう意味で、そう言うのが一番しっくりくるからだったりします。クリーニング後ですと、使用中に染み付いた汗や汚れも抜け落ちていますので、通常よりも藍は良くなじみます。
一度全体を染め直した後、乾かせてからもう一回染め直します。一度ですとムラが出る事が多いのと、藍色にも深みが出て持つようになるので、クリーニング後の藍染は二度染が基本です。防具の状態によっては三度・四度と繰り返す事もあります(古い防具ですと完全に生地の藍が抜け落ちて真っ白になってる事がありますので)。
染め直しが済んだら小手紐を付け直して完成です。
完成品・裏です。小手紐は「人絹(人工絹糸)・古代紫」のものに交換してあります。
今回のこの修理ですが、修理内容は「手刺小手クリーニング(送料込総額¥5,500)」「小手手の内総革張替×2(¥7,000×2)」「小手紐交換×2(¥1,500)」「藍染直し(¥2,000)」「小手表・紺革当て直し×2(¥1,000)」となり、合計で¥24,000になります。
安くは無いと思いますが、小手自体が「二分織刺・返し小手「国勝」」と言う軽く使いやすい良小手ですので、「使用者の手になじんでいる」「小手本体の状態は十分良好」と言う事を考えると、高いと言うのも微妙ではあります。
ひとまずこの小手の修理実例は今回で終わりです。次回は・・・どうしましょうか(苦笑)。