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2007年10月

2007年10月27日 (土)

修理実例(面の一・その2)

こんばんは。田原剣道具店WEB担当田原です。

「面・仕立て直し」作業第2回目の今回は、予定通り面の「分解」作業の前半を紹介したいと思います。

2007102701 まず顎垂と、顎と面布団を固定している乳革を外します。ここの乳革は時折汗や負荷で切れる事がありますが、ここだけ直す事も可能です。

 

 外したら、面布団をひっぱりつつ革包丁を当てて面縁皮を裂いていきます。この時、面布団を面金に縫い止めている糸も外して、必要以上に布団が傷まないよう注意しながら裂いていきます。

2007102702 面縁皮を裂いている途中です。一度漆がのった生皮は水で戻す訳にも行かないので、硬いまま裂いていきます。

布団の他、使える部品は全部使う事になっていますので、この時点ではまず「面布団とそれ以外」に分解する事になります。

 

 

2007102703  「面布団」と「それ以外(面金、内輪、天地、顎)」を外し終えた状態です。

 

 

 ここから今度は、「面布団に残った面縁皮」を外し、「それ以外(面金、内輪、天地、顎)」をさらに部品単位で分解していきます。

今回は「可能な部品は極力使う」「面自体はさほど年数が立っていない&部品も極端な痛みは無い」と言った点を考慮し、部品を極力傷つけないように分解しなければいけません。とは言え、手順に特に違いが有る訳では無く、「部品交換」がある面でも分解や組み立ての手順は完全に同じではあります。

次回は分解作業の後半です。

2007年10月19日 (金)

修理実例(面の一・その1)

こんにちは。田原剣道具店WEB担当田原です。

前回より大分開いてしまいまして申し訳ございません。前々回(10/7)にもちょこっと書いた店の活動がやたら難儀な事になっているのと、あと純粋に修理仕事が多くてブログまで手が回らない状態になっておりました。

正直、しばらくはこのペース(ブログ更新が週1前後)での運営が続きそうです。出来る時と出来ない時の差が激しいのはこの商売に限らないとは思うのですが、如何せん仕事が手仕事メインな上に、それ以外を特盛追加と言う状態ではどうしても更新は控え気味になってしまいます。

まあ、それはさておいて、今回から「面修理の実例」を掲載致します。それも大修理「仕立て直し」です。大分長丁場になると思いますが、お付き合い宜しく御願い致します。

2007101101 これが今回預かった面です。当店で仕立てた手刺一分五厘(1.5分)の面で、通常のサイズよりやや小さい作り(面金が通常14本ではなく13本)になっています。

 

 

2007101104 面の裏側です。面紐の当たる部分の布団が擦れて、中の赤毛布が露出してしまっています。

 

 

2007101103 頭の部分、中央よりやや右側の面縁皮が切れてしまっています。また同位置の面布団も革が擦れ切っています。

 

 

面縁皮がこう言う風に切れた場合、ほとんど修理のしようがありません。面縁に使われている生皮(きがわ)は素の状態ですとかなり硬い素材ですので、小手・手の内の修理のように当ててなんとかする、というのが殆ど出来ないのです。

無理やり紺革(または生皮)などで補強する、と言う事も出来なくも無いです(ぶっちゃけ労力とコストの割りに結果が伴わないのでお勧め出来ません)が、今回は依頼もあったので素直に分解して一から「仕立て直し」となります。

その際、問題のある部品はその都度修理して、可能な限り使う方向で進めます。そうする事でコストをおさえる事になるのと、使用者の方の使用感を可能な限り生かす事も出来るからです。ただし、部品の状態がある程度しっかりしていないと出来ませんが。

次回は分解作業に入ります。

2007年10月10日 (水)

修理実例(小手の二・その2)

こんばんは。田原剣道具店WEB担当田原です。

風もだいぶ冷たくなり、すっかり秋らしくなってきました。前橋はまだそれなりに暖かい日も多いのですが、沼田はこれから一気に寒くなるんですよね。

まあ、まだ秋真っ盛りで果樹園や行楽地等はそこそこ賑わっているようです。私は行く暇がありませんが。

気を取り直して、「修理実例・小手の二・その2」を始めます。前回は左小手のほつれをまつり直しました。今回は右小手の修理を行います。

2007100901 右小手手の内のアップです。手の平の先に大きな穴が抜けています。

ので、これをクラリーノ革を当てて「穴当縫い」をします。

 

 

2007100902 「穴当」が終わった所です。

左小手の縁のまつり直し同様、革が比較的良い状態だったので、そこそこの大きさで収まりました。

 

これで両手の修理が済みましたので、「藍染直し」を小手全体に施します。

「全体に」と言ったのには訳がありまして、修理状態とお客様のご希望によっては部分染めのみの作業もする事があるからです。まあ、今回は「全体に満遍なく・一度のみ」染直しを行いました(当然クローム革の小手頭にもです)。

2007100903 「藍染直し」が終わって完成した小手の表側です。修理前と比べるときっちり綺麗になっています。

 

 

2007100904 完成品・裏です。

 

 

 

今回の小手修理の内訳ですが、「右小手・手の内の穴当(¥700)」「左小手・縁革まつり直し(¥サービス)」「藍染直し・軽(¥1,500)」で、合計¥2,200になります。

「藍染直し・軽」と通常の染直しの違いはそのまま作業手順の差だと思っていただいて結構です。つまり、通常ですと藍染の手順は『染直し>乾燥>再度染直し>乾燥後,、状態を見て染まりが浅かったら再度染直す』と間に乾燥をはさんだ上で最低でも2回は藍染を行います。

軽の場合は仕上がりの状態によらず1回の藍染で終わりです。半乾きぐらいの時にあまり極端な染めムラが有れば調整はしますが、乾燥自体は1回で終わりで乾燥させた後に染め直し作業は致しません。

今回のクローム頭の小手は比較的状態が良く、深い傷も無い為綺麗に直りました。が、実はクロームの小手は修理が難しい小手でもあります。

と言うのも、クローム革と呼ばれるこの手の光沢合成革には割と色々な種類があり、そのタイプによっては直そうにも針を通せない(裏地がザク織の生地だったり、経年劣化で硬化して、通す端から裂けるものもある)ものがあったり、経年劣化によって革の状態がひどく極端な事が多い為だったりします。

後は単純に値段が安い(普通に1万切りますから)ので、徹底して修理して使う程の製品ではない、と言うのもあります(一回ちゃんとした上質の材料で、「一見するとクローム小手」その実上級品、と言う小手を作ってみたい気もします。ただ表に光沢のあるタイプの革はどうしても経年劣化も含めて痛んだ時に手直しし難いのが難点です)。

2007年10月 7日 (日)

修理実例(小手の二・その1)

こんにちは。田原剣道具店WEB担当・田原です。

ちょうど1週間空けてしまいました(汗)。垂修理実例が終わって、少し気が抜けた所も無くも無かったのですが、まあそれだけで無くて、店絡みで大きい動きが起こっておりまして、それで忙しかったってのもあります。

今はまだ詳しい発表は出来ませんが、詳しい内容が決定次第HP・ブログ両方で告知致します。

さて、今回は「垂修理の一」の前に載せる予定でした、小手修理を実況しようと思います。小手の1回目は大修理でしたので、今度は軽めの修理です。

2007100701 やや年季の入った、クローム革頭の小手です。

 

 

 

2007100702 左手の内に大きな穴が開いています。また右小手の縁の一部がほつれて外れています。

年季は入っていますが、極端に劣化している所は少ないので、修理個所は「右小手・手の内の穴当」「左小手・縁革まつり直し」だけです。

ただし、使用者が中学生でそれなりの練習量があるので、補強と見てくれの直しも踏まえて「藍染直し」も行う事になっています。

2007100703 左小手頭のアップです。小指側の縁革のまつり縫いがほつれてはじけてしまっているのがわかります。

革自体はそれほど劣化していないので、素直にほつれた所をまつり直します。

 

2007100704 まつり直しが終わった所です。

革が経年の割に丈夫だったのでこれで済みましたが、手の内革か縁革のどちらかが、もう少しもろかった時は綺麗にまつり直しが出来ません。針を通す端から革が切れてしまうので。

この手の直しはサービスで出来る範疇(他の修理がある時で、あまり大きくない時はサービスの内に入れてます。大きかったり、これだけだったりした時はダメ)の割に補修と言う意味では効果が高いのですが、如何せん『修理対象の防具の状態』に大きく左右されるのが難しい所です。

今回はひとまずここまでにさせていただきます。

2007年10月 1日 (月)

修理実例(垂の一・その3)

こんばんは。今日は色々あったのでちょっと疲れました。

流石に2時間ぶっ続けで歩きとおすのはきつかったです。日頃運動していませんからねえ・・・。

それはそうとして、垂修理の実例・完結編です。前回は両側の紐をそれぞれ垂に取り付ける所まででした。

2007093007 右紐を取り付けた部分に、上から合成(クラリーノ)革を巻いた所です。ここを今度は縫い止めていきます。

 

 

2007093008 縫い止め終わった状態です。今回はミシンの調子が悪かった為手で刺しています。また、切れかかった所を剥き出しに出来ないので、少し長めに合成革を巻いてあります。

同じように左紐も巻いて縫い止めます。

 

2007093009 左紐が縫い止め終わった所です。

紐が直った所で、縁クローム革の穴が空いた所も直しておきます。

これで今回は完成です。

 

2007093010 これで、今回の垂修理は完成です。

今回の垂修理の内訳は、「右紐の補強(¥500)」「左紐の交換(¥1,000)」「大垂・クローム縁革の当縫×2(¥500×2)」で、合計¥2,500となります。

今回は軽修理のみで藍染めやクリーニングなどはやっていません。時間の都合もありましたが、少年用で基本的に高い物ではない事(新品定価で¥6,500。角革やモールも入っているので割と良いものだったりします)や、使用しているお客さんがまだ小さく、これから自分の防具を買い換えるかもしれない点を考慮した上で最低限の修理となっています。

無論それだけでなく、経年の割に修理が必要な個所が少なかったのも大きいのですが。

次回は小手の軽修理にしようと思います。

生業ですので早々修理がらみのネタが切れる事は無いと思うのですが、それでも毎回修理と言うのもなんですので、このページをご覧の方でもし剣道具について何か知りたい事がある方はお気軽にご要望くださいませ。